戦後の家族法学を代表する民法学者の旅行記。
日本で実際に行なわれていた身分関係,財産関係のうち,末子相続,妻問婚,貰い子,家舟,甘土権など,近代の法制度が切り捨てていった例外的な慣習の実例を求めて日本中を調査旅行した筆者が,自身の足跡を後年雑誌『法学セミナー』の連載記事で想い出語りに回想したもの。例外的な現象を求めた結果なのであろう,訪れる先は交通の不便な土地が多く,まるで民俗学者を思わせる地道なフィールドワークが積み重ねられていく。そこには,明治以後の近代化の中で急速に失われていった日本の残照が,筆者のノスタルジックな眼差しのうちに映し出されている。
近代化が一段落した今日,切り捨てていったあれこれに対する後ろめたいような懐かしさを覚えると同時に,日本の近代化とち?なんだったのか,法制度や国家とはなんのためにあるものなのか,考え直さずにはいられなくなる。